2019年5月9日木曜日

地域学入門2019

地域学入門という鳥取大学地域学部1年生の必修授業の1コマを担当している。教授陣が並ぶ中一人講師(若くないけれど若手)が一人混ざっていて複雑な心境。

芸術文化センターの紹介や自身の活動を紹介していくのですが、身体から考えてみようということで、少し踊る前の身体の話をする。
隣の人と手をマッサージしてみる。
簡単だけれど、なんか気持ちよくって、少しホワンとする。で、なんだかおしゃべりしはじめる。手が温かい。
身体に触れることで距離感が縮んだり、親しい感じになる。身体をいかに緩ませてopenなある意味いつでもウェルカムな状態にしていくかがダンスのコツみたいなものではないかと思っていて、身体のことをちゃんと知ることは結構これから大事になっていくのではないかという話をする。

それと合わせてダンスの力を利用して社会に役立てようとするコミュニティダンスの考え方とその実例をロンドンオリンピックを例に話し、それと似たようなことが日本全国で起こることなどを解説する。

また、一方でそれらの背景には公的支援に頼ることで成り立つコミュニティダンスの仕組みがあり、オリンピックが終わったらどうなるのか、あるいは東京に一挙集中しているような中、鳥取ではどんなことができるだろうかと考えつつ鳥取夏至祭をはじめてみたことなどもお話しする。
夏至祭をはじめて3年。鳥大に入った1年生の子達も4年になる頃にはいろんな場所を知り、開拓し、イベントを開いたり、事業を展開していくようなことができるはず。きっとそういう勇気を持って踏み出しちゃうことが大切で、多少失敗しても、やってみないよりはやってみたほうがいい。
その上でどうしたらもっとよくなるかを考えていく。
そういう試行錯誤ができるのは学生のうちだけ(私はまさかの大学でもどりで学生と同じように試行錯誤の連続になっていますが)。

修論の時に限界芸術論をもとに祭りという形を応用したコミュニティダンスモデルを考え、図示したのですが、そのあとの絵というのが見えてきました。
様々な星たちをつないでいく、それがアートの役割です。


(一方でアートではなく芸術という範囲では突出した何かがやはり必要で、それはある種の狂気というか集中力なのかエネルギーなのかそういうものではないかとも思うのでした。その部分はちょっと非日常飛び越えてる人の存在が必要で、それは意図的に作り出すとか構築していくようなものではないと思ったりもします。私はそこまでエネルギー力は高くないけれど。)

最後に日本海新聞4月26日に出ていた鷲田清一さんの言葉を紹介しました。(芸術の有効性、「大学人」を終えて)これもたまたま図書館で銀河鉄道の記事を探そうとしてめくったらありました。最近はこういうたまたま的に見つかるものが増えています。珍しく今回は賢治さんではありません。でも賢治愛については強調しておきました。

「要するに芸術は何事につけて行政にお任せするのではなく、流通などのサービスを購入するのでもなく、自前で、協働をつうじて、既存の整備をリフォームしながらしたたかに生き延びてゆくその術(アート)つまりはマニュアルを前提としない問題解決の技法(アート)のモデルとしてとても有効だということである。こうして私は当初の考えをそっくり反転させることになった。芸術の制作と教育において伝承されてきた技(アート)を初等から高等まで、教育のどの成果においてもメソッドとして導入する必要があるのではないかと。」

ただ鑑賞するアートではなく、自らが生み出す主体となることの大切さ。
教養とは自由になるための技術(リベラルアート)だとすると、アートを学ぶ、あるいはアートの考え方や感覚を知るということは自由に生きることに必要なのではないか。それが私の場合はダンス(身体)をつうじてだったけれども、言葉からだったり、音楽からだったり、スポーツ(運動会)だったり様々あるだろう。

たとえ妄想や思い込みのように見えたとしても、想像力はAIには作り出すことができない部分。特に身体の感じ方はそれぞれ一人一人が異なり、生理的な快不快に関わることもあり、機械化ができない部分になる。想像を創造へ。それが大学で芸術を学ぶ理由になり得るのだろう。だから、なんでも思ったことはやってみたほうがいい。

高校までの学校教育の中では先生の言うことが正しいとされてきた。しかし大学では違う。教員も学生も同じ立場だ。だって正解なんてないんだから。(もしくは全てが正解だから)だから自分の考えを持つ人になったほうがいい。

そんなことを話しました。
たかだか1回の授業で学生たちの生き方が変わるはずはないけれど、それでもボールは投げてみる。その中の一人の心に雫が落ちたらそれはそれでちょっといいことかもと思うのでした。


映像資料として
ウェインマクレガーのトラファルガースクエアでのパフォーマンスを作っていく過程の映像、ウォルフガングシュタンゲさんのワークショップの映像、オハッドナハリンのGAGAの様子などを使用しました。




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